|
私は本書のタイトルのように物理が”たのしい”と思ったことはない。試験を受ければ赤点すれすれ、できれば避けたいところだ。しかし、理学療法には物理療法という治療法がある以上は、苦手を克服せねばならない。
私が学生の際は、物理学の授業と言えば、前回の授業で習った公式から次の新しい公式を導き、設問を解くという印象だった。公式の変形が繰り返される度に式の意味が失われていく。ふと気がつくと机の上には、設問の解答・解説を写したノートが残され、最後に決まってこう言うのだ「果たして現実社会にこれが役に立つだろうか?」と。
看護・医療技術者のためのたのしい物理 [ 中野正博 ]の特徴は、設問が医療と関係していことにある。物を持ち上げる際に腰にかかる力を計算させたり、体の各部位の血圧を計算させたりする。読み手は物理学が医学と密接に関わっている事を感じ、苦手かどうかに関わらず真剣に取り組んでしまうのだ。
本書は、物理学が医療に応用されている事を実感しながら学べる良本と言えよう。
コメント