脳卒中後の長下肢装具の膝継手は何を選ぶのか?
調べてみると義足の膝継手の情報はたくさん見つかるが、意外と脳卒中後の長下肢装具の膝継手の情報は少ない。
そこで、文献や講習会や臨床でよく見かける膝継手をまとめてみようと思います。
*脳卒中後の金属支柱付き長下肢装具を想定しています。
膝継手とは?
膝継手とは、わかりやすく言うと、人の膝関節に相当する部分。人の膝関節は転がりと滑り運動が行われるので、膝継手は、膝関節軸とは少し異なる位置に設定される。
脳卒中後の金属支柱付き長下肢装具で使用される膝継手は膝関節を固定する用途が中心だと思います。
*膝継手の定義を上手く見つけられなかったので、厳密な意味は違うかもしれません。
膝継手の種類
論文や講習会を見てもあまり具体的な説明は少ない印象なので、わかる範囲の説明と実際に使う時や選定する時の私の判断基準をまとめています。
だいたい、リングロックかダイヤルロックが多い気がする。
リングロック
リングロックとは、膝関節を固定したい時に用いる継手になります。
輪留め式とも呼ばれている。
私見
リングロックは、膝継手の第一選択。
下肢の麻痺の回復過程で膝関節屈筋の痙性が上がりそうもない場合や膝関節の関節可動域制限がない場合に選択する事にしている。
ダイヤルロックより値段が安い。
ダイヤルロック
ダイヤルロックは、継手部分が円盤構造になっており、ネジ位置を変える事で膝関節の関節可動域を制限できる。言い換えると膝関節を特定の角度で固定できる。
膝関節を屈曲位で固定した場合
膝関節を伸展0°で固定
ロックを外した状態
私見
膝継手の第二選択。
下肢の麻痺の回復過程で膝関節屈筋の痙性が上がりそうな場合や変形性膝関節症で屈曲拘縮がある場合、円背姿勢が強い場合に選択する。
よくある失敗談
新人さんに多いのが、なぜか膝関節屈曲位にダイヤルロックを設定して
足継手は背屈0°で制限していたりする。
そして長下肢装具を装着して立位を取ると・・・
後方重心になるので、後ろに倒れてしまう。
*その時は足継手を調節する必要がある。
3way joint(3-wayジョイント)
3way joint(3-wayジョイント)は、詳細な情報は少ないが、選択される事もある。詳細な文献が見つかれば追記します。
SPEX膝継手(Spring Assisted Extension膝継手)
SPEX膝継手(Spring Assisted Extension膝継手)は、伸展補助のスプリングが内蔵されており、膝折れを防止しつつ、膝伸展の補助が可能。
屈伸の可動性を持っている。
Step-lock(ステップロック)式膝継手(別名:ラチェット式膝継手)
Step-lock(ステップロック)式膝継手(別名:ラチェット式膝継手)は、ラチェット機構により、完全伸展までに9段階で自動ロックされる。ロックを解除する事で屈曲する事も可能。
起立や移乗で膝が伸展されると、自動でロックがかかり、介助量の軽減ができたという報告がある。
また、屈曲拘縮や痙性で膝関節が屈曲しやすい場合に使用される。この継手を利用して屈曲拘縮が改善した報告がある。
私見
一度、実物を見たことがあるが、確かに痙性が強く膝が屈曲しやすい場合や屈曲拘縮がある場合に、持続伸長が可能なので、便利だと思った。
自分で膝継手を操作できるとあるが、下肢の麻痺で長下肢装具を利用している状態で自分で操作が可能かどうかは疑問に感じた。
参考文献
Step-lock(ステップロック)式膝継手(別名:ラチェット式膝継手)の説明は、以下の文献を参考にして作成しています。
・松永篤彦 等:Step−lock式膝継手の適応と効果-長下肢装具の多目的使用について-.理学療法学 20:514-519,1993.
・金子妙子 等:ステップロック式膝装具の使用経験―多発性脳梗塞患者の下肢屈曲拘縮に対するアプローチ―.理学療法の歩み 16:19-24,2005.
タウメル継手
タウメル継手は、継手のハンドルを回して、継手の角度を任意に調節できる。
膝関節の拘縮予防や持続的な伸長により筋性の拘縮改善に使用できる。
膝継手の値段
膝継手の値段は、テクノエイド協会のこちらでおおよそ知ることができます。
膝継手の画像や簡単な説明もあります。
注意事項
2020年7月現在の各株式会社のカタログを参考に作成しています。間違っている点などがありましたら教えていただければ幸いです
・作成を検討した際には義肢装具士さんに相談してみてください。性能が良くなっていたり、現在のお勧めなどを教えてれると思います。
もっと良い膝継手がありましたら、教えてください。よろしくお願いいたします。
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